【イベントレポート】360°VR音楽コンテンツの現在と未来

360°VR音楽コンテンツの現在と未来

音楽制作雑誌「サウンドデザイナー」との共同企画で、ボーカル&ダンスグループ“J☆Dee'Z”(ジェイディーズ)のVR映像の撮影をおこない、 ある一定のノウハウを得たことを受け、今回のソニックアカデミーサロンでは360°VR音楽コンテンツの特別セミナーを開催。 デジタルハリウッド大学の助教授でありレコーディングエンジニアとしても活躍されている坂本昭人氏とZOOMの360°レコーダー「H3-VR」の開発者である工藤俊介氏にご登壇頂いた。


 参考映像 

『Re:100万回の「I love you」』360°Video/J☆Dee'Z

https://youtu.be/_4WVeRY7HW4




VR音響について

ビクタースタジオでのアルバイトからレコーディングエンジニアとしてのキャリアをスタートし、 Azabu West Studioを経てデジタルハリウッド大学で助教授もされている坂本氏。まずは、VR音響について教えて頂いた。



デジタルハリウッド大学助教授 坂本昭人氏

VR音響とは音で仮想空間を表現する手法で大きく3つに分けられる。

チャンネルベース

サラウンドのようなスピーカーの数に応じて表現する手法

シーンベース

今回の360°音響のような聴く方向によって様々な聴こえ方を表現する手法

オブジェクトベース

VRゲームのような聴き手が動いて表現する手法



その中でシーンベースは大きく2つに分けられる。

Ambisonics

奥域や高さ、左右などのその場の情報を集約し空間を再現する録音方

HRTF

右耳と左耳に届く時差を再現する録音方。



その中で現在主流なのが「Ambisonics」だ。Ambisonicsはステレオ(2つのチャンネル)でLRから音を出す2次元からの空間から、 WXYZの 4つのチャンネルをに分けることによって3次元の空間を再現できるようになったのだ。



ZOOMの360°VR「H3-VR」

次にご登壇頂いたのはZOOM社の開発担当者である工藤俊介氏。プロのバンドマンとしても活躍されていた工藤氏は、バンド時代リハーサルスタジオで録音する際にステレオのレコーダーでは録る方向によって音の聞こえ方が全く違うため限界があった経験から4チャンネルサラウンド4タイプのレコーディングモードを備えた「ZOOM H2N」のハンディーレコーダーを開発。そこから開発を進めて左右だけでなく上下奥行きを含む全方位の音を集音するVRマイク「H3-VR」が誕生した。




工藤俊介氏。ZOOM社でレコーダーの開発を担当する。

立てて録音するだけでなく、場合によっては下向きにしたり、横にしたりするだろう。 普通であればそれをそのまま使ってしまうと上下左右反転して録音してしまう。しかし、これはスマホにも使われているジャイロセンサーが入っているため空間を認識し処理、正しい方向で録音できるのだ。価格もリーズナブルで大きさも15cmほど、操作も簡単なので初心者にも十分扱えるマイクである。


ZOOM H3-VR 公式ページ



実際にヘッドホンでH3-VRの聴こえ方を体験してみた。

もちろん録音だけでなく再生もできるH3-VR。再生中もジャイロセンサーが反応するため傾けたり回転させて再生すると音がそれに合わせて聴こえる。事前に工藤氏が録音してきた外の様々な音を再生して聴いてみた。音の反響や回り込みが無い外の自然音の方が風や声など360°の空間が一番再現できるという。確かに再生中にH3-VRを回転させたり、頭の上に置いたりするとその場にいるように錯覚するほどだった。参加したサロン生も「H3-VR」をの位置を動かしたり方向を変えることで360°の空間に感動していた。




進化する音響機材

VR元年と言われた2016年、360°まわる映像に対して音はまだ2Mixでしか回っていなかった。2018年はAmbisonicsの実用化により360°VR音響が活躍を始めた。そう考えるとVRの歴史はまだまだ浅いと言えるだろう。今回の「H3-VR」に限ったことではないが、最高の技術はあってもそれを活用化出来なければ意味がない。さらにそれを誰でも操作できるようになったのは開発者の技術と努力の賜物である。音響機材は技術者の努力によって日々進化している。今回はその進化した技術を学ぶだけでなく実際に触って体験することができた貴重なセミナーとなった。





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この記事を書いたのは

ソニックアカデミーサロン
編集部