今回の対談はソニックアカデミー2回目の登壇となる保本真吾(写真左)の提案で実現したもの。同じ音楽プロデューサーという立場ながら、それぞれ独自のアプローチで、多くの作品を手掛け、ヒット曲を生み出してきた2人のスペシャル対談ということもあり、会場には多くのサロンメンバーが集っていた。
2人は公私共にやり取りをしている仲。保本が本間にポルノグラフィティの「アポロ」の制作秘話を聞いたときの話がとても印象深かったそうで、それを深掘りしたいというのが、この対談の大きなテーマだった。
◎本間がプロデューサーに至った経緯
まずは保本が、本間がプロデューサーという立場に至った経緯を聞くところからスタートした。1989年から音楽事務所ハーフトーンに所属していた本間のキャリアの出発点はライブのサポート・ミュージシャンで、当時、仕事の数が多かったアイドルの現場で経験値を積んでいったという。そこからライブ・アレンジを任され、レコーディングのアレンジャーへとつながっていった。その間、本間の前には圧倒的な存在として武部聡志氏がおり、演奏はもちろん、アレンジから現場での仕事の仕方、予算の流れまで、多くを学ぶことができたそうだ。その経験をしていく中で、自分もいつかプロデューサーという仕事に就きたいと決意したという。
本間の転機となったアーティストの出会いの話題になると、長くライブ・サポートを努めた槇原敬之氏を挙げ、彼の考え方、ものの見方、音楽の作り方は、それまでの自分のノウハウでは計り知れないところにあったと振り返る。そしてすべてをポップスに落とし込める天才だと本間は絶賛した。
◎仕事の作り方について
人とのつながりから仕事を得ることは、よくある話だと思う。本間も例外ではなかったが、その流れで仕事をもらうことが、自分の本当にやりたいこととズレがあり、あるときから、自分のビジョンをしっかり伝えるようにしたそうだ。そのビジョンは音楽プロデューサーになりたいということ。自分のビジョンに合わないときは、断ることも覚えたという。
しかし、しっかり説明して断ると、数年後にまた声をかけてもらえることあり、そういった形で人間関係を築くことも大事だと語っていた。一方で保本は、どこから仕事を得ていけば良いか、長く苦悩の時間を過ごしたという。当時はソニックアカデミーのようなコミュニティもなく、自分だけでコツコツと仕事をこなすことで今の地位までたどり着いたが、サロンメンバーには、この状況を活用すべきだと説いていた。
◎ポルノグラフィティ「アポロ」制作秘話
さて、今回の対談のメイン・テーマである、ポルノグラフィティ「アポロ」の制作秘話について、本間が当時を振り返ってくれた。本曲で特に意識したのは、分かりやすさだったということで、メロディはペンタトニック・スケールをベースにリズムはソリッドで、さらにラグジュアリーなコード進行を当てて、ボーカル岡野昭仁の特徴である滑舌の良さとハイトーンを生かす長めのメロディにしたそうだ。このように曲が書けたのは、本間が80年代からライブサポートをしていく中で、名作家たち作ったメロディ・ラインやコード進行、アレンジなどを学ぶことができたことが大きかったと語っていた。保本も、聴いた瞬間に飛び込んでくるインパクトが印象的だと言い、そのメリハリの演出が大衆に届くポイントだと分析していた。この「アポロ」で本間のプロデュースが一つ結果として残り、以降の「サウダージ」や「アゲハ蝶」など、緻密に練られたアレンジが、ポルノグラフィティの特徴として定着したという。
◎未来の音楽シーンについて
最後のテーマは、未来の音楽シーンについてということで、2人が感じていることを語ってくれた。音楽制作においては、AIの発達により、自動でエフェクトをかけることができるプラグインについて言及。それを使うのが悪いのではなく、それを使うまでの工程をいかに丁寧に作り上げるかが重要だと語る。本質はクリエイター自身にあるという保本の言葉が印象的だった。そして、昨今よく聞くようになったコライトについての話題に及ぶと、なるべくしてなった形だと本間は言い、それが補い合いでは意味はなく、スペシャリスト同士の集合体であるべきだと説いていた。お互いを認め合いながら、刺激し合って作り上げていくことに意味があるのだと言う。さらにYouTubeなど、多くあるデジタル・マーケティングを活用して、自分の音楽をどのように広めていくか、それぞれがしっかり考えて行動していくことが重要だと語っていた。
1時間を超えて行われた本イベント。本間のプロデューサーとしての手腕を多く知ることができ、また保本と共通認識を持っていた未来の音楽シーンについても、参加者にとっては今後の作品作りの大きなヒントになったに違いない。
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